患者の栄養状態は、肝臓で合成されるアルブミン、総コレステロール、コリンエステラーゼで検討する。これらの値は十分に食事ができ、肝臓で正常に合成されれば基準範囲内に入る。
これらのうち1項目でも正常範囲内であれば、数日前まで食事が摂取できていたと判断する。
目次
アルブミン
アルブミンは血中に一番多く存在するタンパク質です。体のどこかに傷害があれば、その修復のために消費されるタンパクと考えると理解しやすい。
肝臓でのアルブミン合成が低下して、低アルブミン血症になっていれば、患者の栄養状態が良くないと判断できる。ただし、低アルブミン血症はアルブミンの異化亢進や消費亢進で起きることが多い。そのため、アルブミンで患者の栄養状態を考察する場合は、異化亢進や消費亢進を否定しなければならない。
アルブミンの低下はなぜ起こるのか
アルブミンは次の過程で産生される
①食事にてタンパク質を摂取できる
②消化管にてタンパク質はアミノ酸に分解され吸収される
③消化されたアミノ酸は門脈を通って肝臓に運ばれる。
④肝臓にてアミノ酸からアルブミンが合成される
⑤肝臓から血管内にアルブミンが供給される
そのため、上記のどの過程が障害されても低アルブミン血症は生じる
アルブミンの消化亢進
①異化亢進
炎症:炎症部位修復のためアルブミンが消費
腫瘍:腫瘍病変でのアルブミンの異化
外傷・手術:組織修復のためにアルブミンが消費
②臓器からの喪失
腎臓:ネフローゼ症候群など
皮膚:熱傷など
消化管:蛋白漏出性胃腸症
出血:種々の臓器から
③アルブミン体内分布の変化
胸水・腹水にアルブミン移動
組織に漏出(血管透過性亢進)
総コレステロール
コレステロールは、食事で原料となる脂質及びタンパク質が摂取され、消化管で消化・吸収され、肝臓で合成される。そのため、食事が摂取できずコレステロールの材料が肝臓に運ばれないか、肝臓の合成能が低下すると総コレステロールが低下する。
コレステロールの異化亢進や消費亢進でも低下するので、これらも考慮する必要がある。
肝臓ではコレステロールの70%が合成される。アルブミン同様栄養状態が悪いと材料が肝臓に供給されないためコレステロール合成が低下し、総コレステロールが低下する。しかし、栄養状態が改善に向かうと数日で基準値範囲内に回復する。
総コレステロールの低下はなぜ起きるのか
コレステロールは以下の過程で産生される
①食事にて脂質及びタンパク質をとる
②コレステロールは胆汁酸で分解され、消化管で吸収される
③腸管壁にてカイロミクロンが作られ、門脈から血流に入る
④血中でカイロミクロンからレムナントになり、肝臓にとりこまれる
⑤肝臓にてコレステロールが合成される
⑥肝臓から血管内に供給される
そのため、上記のどの過程が障害されてもコレステロールの低下は生じる。
コレステロールの消化亢進
①重症炎症
②敗血症
③血球貪食症候群
④肺炎
コリンエステラーゼ
コリンエステラーゼも肝臓で合成されるタンパク質である。したがって、アルブミンと同様に栄養状態の指標として用いられる。
コリンエステラーゼは消化亢進でも低下する。
コリンエステラーゼの低下はなぜ起きるのか
コリンエステラーゼの低下は様々な病態で認められるが、原因がはっきりしているのは薬剤だけ。
コリンエステラーゼは以下の過程で産生される
①タンパク質を含んだ食事をとる
②タンパク質はアミノ酸に分解され、消化管で吸収される
③吸収されたアミノ酸は、門脈にて肝臓に運ばれる
④肝臓にてアミノ酸から合成される
⑤肝臓から血管内に供給される
上記のどの過程が障害されてもコリンエステラーゼの低下は生じる
コリンエステラーゼの活性低下
①薬剤:有機リン、サリン、スキサメトニウム
②熱傷
③敗血症
その他検査データ
尿酸の低下
尿酸はプリン体を多く含んだ食事やビール、豆類に多く含まれるタンパク質から肝臓で合成される。
高値であれば栄養状態は悪くないと考えられる。しかし、腎機能低下により上昇するので、糸球体濾過量低下がないことが条件。また、細胞障害でも上昇するため、細胞障害のないことも条件となる。
ヘモグロビンの低下
栄養状態が悪いと、鉄の供給もへり、鉄欠乏性貧血になりやすい
最後に
検査データから身体の状態が見えてくることもありますが、身体所見や患者の訴えをふまえた上で、検査データも確認していきます。一回の検査データから推し量るのではなく、経過を追い、どのようなデータの変化が起きているか、そこから何が考えられるかをアセスメントしていきましょう。