胃の解剖生理

  • 2022年3月21日
  • 2022年4月19日
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胃の解剖

胃の入り口を噴門、出口を幽門といい、上縁を小弯、下縁を大弯、前面、後面をそれぞれ前壁、後壁という。

摂取された液体は、胃の上壁(小弯の内側)に沿ってそのまま十二指腸に流れ、胃にとどまることはない。

一方大弯側は下方と上方に張り出し、胃の全体を作り上げる。上への張り出しを胃底と呼ぶ。胃底より下方を胃体というが、幽門部との境は明確なものはない。胃角を頂点とした三角形の領域を胃角部(幽門洞)といい、それより左が胃体、右が幽門部(幽門管)という。

幽門から先は十二指腸上部に移行する。X線像では十二指腸球部と呼ぶ。

消化管の中で胃(と十二指腸の一部)だけがそれぞれ小網、大網と名称を変えた腹側間膜、背側間膜の両方をもつ。これらの膜と胃が仕切りとなって腹腔に新たな空間ができる。これが網嚢で、その入口を網嚢孔という。胃潰瘍で後壁に穴が空いた場合、胃内容の流出は網嚢に限局するため症状が現れにくい。

蠕動運動によって、食べ物は撹拌されていく

胃は食べ物を一時的に貯蔵する場所であると同時に、蠕動運動によって食塊と胃液を混ぜ合わせ、粘液ヒダですりつぶします。すりつぶしたものを十二指腸に送っていきます。

強い収縮運動によって胃内容の一部は十二指腸に送られますが、幽門括約筋の収縮によって幽門が閉じて、胃内容の大部分は後戻りします。

後戻りした胃内容は幽門部でまた強く撹拌されます。

胃において蠕動運動は

  • 固形の食べ物を胃液と混ぜ、どろどろの粥状にする
  • 食べ物に付着した細菌を殺菌する
  • 不溶性の脂肪滴を小さくし、水溶性の消化液中に分散する

これらの目的のため、胃で1~4時間程度食べ物が滞留するようになっています。

蠕動運動は消化管壁を構成する平滑筋の収縮運動であり、消化管内容物からの直接刺激のほか、消化管平滑筋を支配する自律神経(副交感神経)とホルモン(ガストリンなど)の調整を受ける。

消化管における胃の役割

消化管における胃の役割は、食物に付着した微生物の殺菌と、脂肪・蛋白質の初期消化です。この目的のため、胃の容積は拡大し、食べ物を胃液(強い酸と消化酵素を含む)と混和する。

幽門部の括約筋は、酸と消化酵素が充分に行きわたり、微生物が殺菌され、食べ物が部分消化されるまで閉じている。

食べ物の胃内停留時間(1~4時間)は、その成分に時間が変わってくる。脂質を多く含む食事の場合、停留時間は長くなる。

胃酸の作用は殺菌、ペプシノーゲンの活性化、蛋白質の変性

胃腺は胃粘膜内に存在する外分泌腺である。胃液の分泌量は約2,5Lであり、そのほとんどは食後の数時間に分泌される。

胃液には塩酸とペプシンのほかに、粘膜保護作用をもつ粘液(ムチン)とHCO3が含まれる。胃液の分泌量は食物の分解産物による粘膜への直接刺激のほか、粘膜下神経叢、自律神経、ホルモンにより調節される。

胃酸は強い酸であり、強い殺菌作用を持つ。また、主細胞から分泌された不活性のペプシノーゲンを活性型のペプシンに変換する。さらに、蛋白質の立体構造を変えることによりペプシンの作用(ペプチド結合の加水分解)を受けやすくする。中世溶液中では不溶の物質でも、強酸性の溶液中では溶解されるので、ペプシンの加水分解を助ける。

胃粘膜自身も蛋白質ではあるが、胃酸から分泌される粘膜とHCO3に覆われ、酸とペプシンから守ってくれる。

適度に消化が進むと幽門括約筋が開き、胃内容物は十二指腸に流れ込む。胃液と混和され、粥状になった食べ物は十二指腸粘膜に対し、胆汁、膵液、GIP(胃抑制ペプチド)の分泌刺激として作用する。

胃液の分泌は迷走神経と局所ホルモンによって調整される

胃液の分泌は、食塊やその消化産物による胃壁、粘膜に対する直接刺激のほか、神経系と局所ホルモンによって調整される。消化液の分泌調節はおおまかに三相にわけられる。

脳相

摂取前の状態で、視覚(料理を見る)、聴覚(料理の音)、嗅覚(料理の匂い)刺激によって、唾液と胃液の分泌量が増加する。

胃相

口内の食物が胃に移送されると、胃壁内の伸展受容器や、粘膜内の化学受容器が刺激され、そのインパルスが局所(粘膜下神経叢)と中枢(延髄)に送られる。その結果、胃腺の酸分泌細胞、主細胞が刺激され、塩酸とペプシノーゲンが胃内腔に分泌される。

また、食物が胃内に入ると胃液のpHは3以上に上昇し、G細胞の分泌抑制が解除される。G細胞から分泌されるガストリンは、強力な酸分泌刺激となる。

腸相

胃の内容物が適度に消化されると、幽門括約筋が開き、食物が十二指腸に流れ込む。

食物の中に脂肪酸の割合が多いとGIP(胃抑制ペプチド)により胃に抑制性のシグナルが送られ、酸分泌を低下させ、胃からの排出時間を長引かせます。

胃における滞在時間は、溶液で10~20分。でんぷん質の食事で1~2時間。蛋白質中心の食事はこれより長く、脂肪を多く含む食事では2~4時間になる。

ホルモンによる調節

ガストリン

幽門線や、胃腸壁内のG細胞で合成され、局所刺激あるいは自律神経の活動に応答して粘膜下の血液中に分泌される。

血中半減期は2~3分。胃腺に作用し塩酸とペプシノーゲンの分泌を促進するほか、胃壁の平滑筋の運動を促進する。胃腸粘膜の促進作用もある。

胃酸が充分にいきわたり、幽門部のpHが低下すると、D細胞からソマトスタチンの分泌が増加し、二次的にガストリンの放出を抑制する。

セクレチン

S細胞から分泌され、アルカリ性膵液の分泌を促す。半減期は5分。酸性の胃内容物が十二指腸に移動してくるとセクレチンが分泌され、幽門括約筋を収縮させ、胃内容物が一気に十二指腸に流れ込むのを防ぐ。また、膵液中に大量のアルカリ液を分泌し、胃酸を中和する。

分泌刺激:十二指腸管腔内の酸性化

胃抑制ペプチド(GIP)

十二指腸粘膜のK細胞から分泌される。胃の消化活動(胃液分泌と蠕動運動)を抑制する。

幽門を通過する食物の酸性度と脂肪及び脂肪酸含有率が高いと、GIPがより多く放出され、十二指腸への排出を遅らせる。

分泌刺激:グルコース、脂肪酸

どうして胃は胃酸でとけてしまわないのか

胃液は強い酸性なのに胃粘膜の表面はどうしてとけてしまわないのか。その理由は胃液はpH1~2の強酸性でも、胃粘膜表面はpH6~7の弱酸性に保たれているから。

胃の表層粘膜細胞は粘液(ムチン)とHCO3を分泌し、胃粘膜表面に不撹拌層というゲル状の層を形成する。この層内では塩酸はHCO3によって中和され、pH勾配(胃内腔pH2~粘膜面pH7)が形成される。

粘液は胃粘膜を守るのに重要な役割を担っている。しかし、胃潰瘍患者の多くは粘液分泌料の低下以外に、ゲルを形成するムチンの質的変化が起きている。

胃粘膜細胞は2~3日周期で表層から絶えず脱落し、深部の新しい腺細胞が分化しながら移動して置き換えられている。粘膜の血行障害や放射線障害により深部細胞の増殖、分化、移動の周期が遅くなると、傷害された表層細胞の置換が遅れ、潰瘍を誘発する。

内因性のプロスタグランジン(PGE2)は、ヒスタミン受容体と拮抗して酸分泌を抑制する。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を常用する患者に胃潰瘍が発生することがあるのは、これらの薬物がプロスタグランジン合成酵素のシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するからである。

粘膜防御因子と傷害因子のバランスが崩れると潰瘍となる

消化管の潰瘍は胃および十二指腸に多発する。健常人の場合、胃・十二指腸粘膜の表面はムコ多糖やHCO3で保護されているが、胃酸分泌が過度あるいは食間も含めて持続的に亢進すると胃内pHは低下し、酸とペプシンによって侵食される。

粘膜は初期は炎症を起こし、やがて組織の欠損をきたす。組織の欠損が粘膜筋層に及んだ状態を潰瘍という。

潰瘍が深部に及ぶと血管が損傷し出血する。潰瘍が悪化し消化管穿孔となると、腹膜炎や、大出血をおこしショック状態となったりと極めて危険です。

ピロリ菌は潰瘍の原因の一つ

ヘリコバクター・ピロリは数本の有鞘鞭毛を持つグラム陰性桿菌です。胃炎、胃潰瘍、胃がん、胃リンパ腫などの患者では特に陽性率が高い。

ピロリ菌はCO2とNH3(アンモニア)を産生する。NH3は塩酸を中和しピロリ菌の生存を可能にするほか、胃粘膜細胞を直接傷害する。さらに貪食細胞が生成する活性酸素(次亜塩素酸HOCl)と反応してモノクラミン(NH2Cl)となり強い細胞傷害性を示す。

このようなことから胃潰瘍の治療や胃がんの予防のためにピロリ菌を除菌することを推奨されています。