そもそも痛みってなんで起きるのか。けがした時だったり、腰を酷使した時だったり、頭やお腹が痛くなったり。
そんな痛みがどんな種類に分けられるのか、なぜ痛みがでるのか掘り下げていきましょう。
痛みの定義とは
国際疼痛学会が定める定義としては
実際または潜在的な組織損傷に関連する、または関連する不快な感覚および感情的経験
IASP、疼痛|の定義の改訂を発表痛み研究国際協会(IASP) (iasp-pain.org)
と定めています。
さらに痛みに関する項目のなかで
- 痛みは、常に生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受ける個人的な経験です。
- 痛みと侵害受容は異なる現象です。痛みは感覚ニューロンの活動だけでは推論することはできません。
- 人生経験を通して、個人は痛みの概念を学びます。
- 痛みは通常適応的な役割を果たすが,機能や社会的・心理的な幸福に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 言葉による説明は、痛みを表現するいくつかの行動の一つに過ぎません。コミュニケーションが取れていないことは、人間や非人間の動物が痛みを経験する可能性を否定するものではありません。
など述べられています。
上記に述べられているように一人ひとり痛みに対する感覚は同じではなく、様々な影響を及ぼす因子でもあることがわかります。
痛みとは自分しかわからないもので、他者は想像することしかできず、同じ痛みというものを理解することができません。
だからこそ、その人の訴える痛みを多角的な視点からアセスメントした上で尊重していかなければならないものだと思います。
痛みの種類
では痛みの種類はどんなものがあるのか
痛みは大きく分けて3つに分けられます。
- 侵害受容性疼痛
- 神経障害性疼痛
- 心因性疼痛
侵害受容性疼痛
外傷や感染や、体の内外からの様々な刺激から痛みを感じる侵害受容器を刺激しておこる痛みです。
この痛みが体に危険が起きているサインとなっているため、人間にとって必要な痛みです。
侵害受容器のほとんどは皮膚と内臓にあります。そのため、腫瘍が骨や臓器に広がる癌もほとんどが侵害受容性疼痛です。
多くの場合は、体を動かしたり、せきをしたり、笑ったり、あるいは深呼吸したときや、手術の傷口を覆った包帯を交換するときに、痛みが強くなります。
侵害受容性疼痛では、けがなどによって壊れた細胞からプロスタグランジンやブラジキニンという物質がでてきて痛みが出てきます。
そのため、この物質を抑制することでアセトアミノフェンやNSAIDsは痛みを軽減させています。
痛み止めについて詳しく書いている記事はこちらから
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛とは神経の圧迫や損傷、脳や脊髄の痛みの信号を処理する過程の異常などが原因としてあげられます。
代表的なものは
- 帯状疱疹後神経痛
- 坐骨神経痛
- 糖尿病神経障害
- 頚椎症
- 交通事故の後遺症
などがあげられます。
神経障害性疼痛に対する痛み止めはどんなものが使われるか
- 三環系抗うつ薬(ノルトリプチリン、アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミンなど)
- セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬[SNRI](デュロキセチン、ベンラファキシン)
- カルシウムチャネルα2-δサブユニット結合薬(プレガバリン、ガバペンチン)
- 局所リドカイン(5%リドカイン)
など
心因性疼痛
ストレスや不安などの精神的、心理的問題でおこる痛みです。
痛みを評価するスケール
痛みが主観的なものであり、他者が評価することが難しいと上記で述べました。
そんな痛みに対する認識を少しでもわかりあえるようするため、評価するために疼痛スケールがあります。
- NRS (Numerical Rating Scale)
- VAS (Visual Analogue Scale)
- VRS (Verbal Rating Scale)
- FPS (Faces Pain Scale)
NRS
痛みを0~10の11段階にわけて0が痛みが全く無い、10が想像できる最も痛い状態として患者に数字を言ってもらいます。
VAS
10cmの直線上で左端が痛みがない、右端が最悪の痛みとして患者に線をひいてもらいます。
VRS
痛みを痛みなし・少し痛い・痛い・かなり痛い・耐えられないくらい痛いの5段階にわけて言語化し、患者に選んでもらいます。
FPS



左端が痛みなし、右端が耐えられないくらいの痛みとして患者に選んでもらいます。幼い子供や高齢者に行われる事が多いです。
痛みに対する看護
では看護師として痛みに対しどんな看護を行っていくべきか。
まず、疼痛についてアセスメントを行います。
観察
疾患から侵害受容性疼痛か神経障害性疼痛か。急性のものか、慢性のものか。
痛みの性状、時間、程度、場所。
外傷があれば創部の発赤、腫脹、熱感の有無の観察。
痛みによる不安の有無、睡眠はとれているか。
ケア
適切な薬剤の投与。
痛みの少ない安楽な体位の保持、体位交換。
温罨法、冷罨法の実施。
コミュニケーションや気分転換を行い精神的なケアを行う。
まとめ
疼痛コントロールを適切に行えれば患者のQOLもあがり、離床も進みます。
疼痛は主観的なものであり、他者が完全にわかることはできないものです。だからこそ患者の思いを尊重し、思いに耳を傾けることが重要だと思います。
わからないことだからこそ、わかろうと努力を怠らないようにしていきたいですね。