内視鏡での検査や治療をスムーズに行うために薬剤を使いますが、メリット・デメリットを十分に理解し使用する必要があります。
偶発症や禁忌について学び、適切な薬剤の使用を学んでいきましょう。



目次
局所麻酔薬
リドカイン塩酸塩(キシロカイン)
咽頭麻酔にはキシロカインスプレー8%を使用します。40mgで十分量とされており、おおよそスプレー5回分になります。中毒域は200mgと言われているため、多く使えばいいというものでもありません。
キシロカインビスカスやキシロカインゼリー、キシロカイン液などを併用することもあるので、過剰なトータル量になっていないかも心がけてみます。
副作用にも注意していきます。重大なものではアナフィラキシーショック(アレルギー)と中毒があります。アレルギー反応はごく少量でも発症するが、中毒症状は血中濃度の過度の上昇が原因となります。
キシロカインスプレーにはエタノール(アルコール)が添付されているため、アルコールのアレルギーがないかも確認します。
ナファゾリン硝酸塩(プリビナ)
経鼻内視鏡時に鼻腔内の前処置として使用します。血管収縮薬で、浮腫を軽減させ鼻出血や鼻痛予防となります。効果は噴霧後10~15分がピークと言われているので、投与のタイミングも注意します。
消泡剤
ジメチコン(ガスコン)
胃内の気泡や胃壁に付着しているを除去します。
プロナーゼMS
蛋白分解酵素製剤で、胃粘液を溶解除去します。副作用として、粘液の除去に伴う出血の悪化、血液凝固系への影響から胃出血(潰瘍やポリープなどの病変部からの出血)のリスクがあるため、消化管出血が疑われる患者には使用しません。
鎮痙剤
ブチルスコポラミン(ブスコパン)
使用頻度は多いが、禁忌の疾患があるため問診が重要となります。
禁忌
- 緑内障(眼圧を高めるリスクがあるため)
- 前立腺肥大による排尿障害(さらに尿が出にくくなる)
- 重篤な心疾患(心拍数を増加させ、症状悪化のリスクがあるため。)
- 麻痺性イレウス(消化管蠕動を抑制し症状をさらに悪化させるリスクがあるため。)
起こりうる副作用(口渇、目の調節障害、心悸亢進、顔面紅潮)についても説明しておきましょう。
CFでは医師によって検査開始前にブスコパンを1A使用する人や、検査開始時に1/2A使用し、追加投与が必要なときに残りの1/2Aを使用する医師もいます。医師のやり方も覚えることができれば、よりスムーズな検査に繋がりますね!
グルカゴン(グルカゴンGノボ)
基本的にはブスコパンが使用できない患者に使用します。グルカゴンも禁忌疾患があるため、注意しましょう。
禁忌
- 褐色細胞腫
慎重投与
- 糖尿病
- 糖尿病1型患者
- インスリノーマの既往あり
- 肝硬変などの肝臓の糖放出能が低下している肝疾患
ミンクリア
ブスコパンやグルカゴンの使用が難しい患者に使用します。刺激があるため経口投与は行いません。胃内に散布する場合は幽門前庭部への散布が効果的と言われています。
鎮静剤
ジアゼパム(セルシン、ホリゾン)
半減期が35時間と持続時間が長く、筋弛緩作用、抗痙攣作用があります。副作用が少なく安全性が高いとされています。しかし、脂溶性で血管刺激が強く、血管痛や血管炎を起こすことがあります。
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)
半減期は24時間と長く、ジアゼパムと比べ血圧など循環器系への影響は少ないが、強い睡眠作用があります。
禁忌
- 重症筋無力症
- 急性狭隅角緑内障
ミタゾラム(ドルミカム)
他の薬剤に比べ作用発現が早く、半減期は2時間と持続時間は短いが、鎮静作用は強い。舌根沈下しやすく、使用後の健忘症状も強いと言われています。
上記3つはベンゾジアゼピン系の薬剤です。抗不安作用、健忘作用により不安を抑え、検査中の苦しさを忘れさせるという長所があります。
プロポフォール(プロポフォール、ディプリバン)
代謝が早いため覚醒がよく、使用を中止すると短時間で意識が回復します。
禁忌
- 卵・大豆アレルギー
- 妊婦・授乳中の患者
鎮痛剤
単独で使用するか、鎮静剤との併用にて使用します。
ペチジン塩酸塩
オピオイド受容体作動薬で麻薬に分類されています。
副作用に呼吸抑制、末梢血管拡張作用があります。検査中のSPO2の低下や検査後の起立性低血圧に注意して観察します。
ペンタゾシン(ペンタジン、ソセゴン)
オピオイド受容体作動薬ですが、麻薬ではありません。オピオイドの副作用にある呼吸抑制や依存症が軽減されます。
ブプレノルフィン塩酸塩(レペタン)
オピオイド受容体作動薬ですが、麻薬ではありません。強い鎮痛効果があります。副作用に嘔気、嘔吐が比較的に見られます。
鎮痛薬・鎮静薬の拮抗薬(リバース)
フルマゼニル
ベンゾジアゼピン系の拮抗薬として使用されます。効果時間が短いため、再鎮静に注意が必要。ベンゾジアゼピン系の薬を常用している患者(精神薬や睡眠導入剤など)に使用する際は常用薬にも拮抗作用が及ぶ可能性があるため、使用量に注意が必要となります。
ナロキソン
ペチジン、ペンタゾシンの拮抗薬。麻薬の拮抗を行うことで急な血圧の上昇や、頻脈が起こる可能性があるため、観察が必要。呼吸抑制にはよく効くが、鎮痛作用はあまり減弱しないと言われています。
鎮静・鎮痛剤を使用するときの観察
鎮静・鎮痛薬を使用する際は
- 呼吸抑制による低酸素血症、舌根沈下による上気道閉塞
- 誤嚥
- 転倒
- 血圧変動・徐脈・不整脈
- 覚醒遅延
- 健忘
これらの観察をしっかり行っていきます。
腸管洗浄剤
ニフレック
PEG化製剤と各種電解質を服も腸管洗浄剤。
等張液であり、腸管内容が軟化・増大し、その刺激で物理的に便通が促進されます。
モビプレップ
高張液だが、基本成分は等張液であるPEG化製剤(ニフレック)と同じ。薬剤が腸管内を移動する速度が速いため、比較的短時間で洗浄が終了します。脱水にならないよう十分な水分摂取を促します。
マグコロール
マグネシウムイオンが腸管内から吸収されにくいという性質を利用します。内服により腸管溶液を増やし、大腸の蠕動運動を促進させ、排便を促します。
マグネシウムが主成分のため、高Mg血症を引き起こすリスクがあり、腎機能障害に対しては禁忌、心機能障害に対しては慎重投与とします。
最後に
問診にて禁忌の薬剤はあるか、慎重投与の薬剤はあるかしっかり確認が必要となります。例えば緑内障の例だと、緑内障だけを確認するのではなく、他に眼科でかかっている病気がないか確認したりすることで、情報を取り漏れが減ると思います。聞き方一つで取れる情報量も変わってくるため、自身の声掛けのやり方も振り返りが必要になってきますね。安全な検査を行えるよう薬効、禁忌、慎重投与についてはしっかり覚えていきましょう!
病棟から内視鏡に異動したばかりの頃の気持ち↓